『マッチスティック・メン』※ネタバレ有
原題:『Matchstick Men』
製作国:アメリカ合衆国
公開年:2003年
上映時間:116分
監督:リドリー・スコット
脚本:ニコラス・グリフィン
テッド・グリフィン
出演:
ブルース・アルトマン
シーラ・ケリー
【あらすじ】
詐欺師のロイ(ニコラス・ケイジ)は強迫性障害を患ってしまっており、そのため極度の潔癖症であった。ある日ついに彼の精神状態はボロボロになり、日常生活にも支障をきたすようになってしまう。
彼を心配した相棒のフランク(サム・ロックウェル)は、彼に精神分析医のクレイン(ブルース・アルトマン)を紹介する。
ロイはクレイン医師の診断を重ねる内に、彼の障害は十年以上前に妻と離婚したことが原因であると考えられること、当時妊娠していた妻は無事に娘を出産していることが告げられる。
クレインはロイに、現在14歳になった娘のアンジェラ(アリソン・ローマン)と会うことを薦める。
初めは抵抗したロイだったが、自分の娘がどのように成長したのか興味を持ち、ついに彼女と二人で会うことにする。
突如現れた家族にお互いに困惑する二人だったが、次第にその関係は良いものへと変わっていく。
これ、どうかお願いだから
初見の方は何も考えずに全部見て欲しい。
先読みとかせず純粋な気持ちで見て頂きたい。
そしたら絶対騙されるから。
こういう「どんでん返し」系の元祖って一体どの映画なんだろうか。
私が物心ついて映画好きになってから来た「第一次どんでん返しブーム」は確実に『シックス・センス』である。
この作品の後に「まさかの展開!」とか「衝撃の結末!」と言うような煽り文句が一気に増えた気がする。
余りにも話題になりすぎて気になって結末を聞いた後で何故か映画館に行くことになり、まさかのラストを知った上で『シックス・センス』を見るという謎の行動を起こしたのが懐かしい思い出である。
ちなみに「第二次どんでん返しブーム」は『SAW』である。
これも第一次同様に決まったような煽り文句が増え、派生作品やまがい物まで出るようになった。
私はこの手の映画は先を考えないようにして見ている。ドラマでも漫才でも何でもオチを先読みするとつまらないのだ。
その上で先読みが出来てしまう場合は「その作品と相性が悪かったのだな」と思うようにしている。最近は比較的ボーッとして見ているのでそういったことは余りないが。笑
しかしこの『マッチスティック・メン』は「どえええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!?????????????」と思うくらいびっくりした。そして絶望した。けどなんだかラストはちょっとほっこりな不思議な作品になっている。
この作品が何故こんなに人を騙しやすいかについて考えたが、材料が人の弱いところを程よく突っつくようにできているのだ。
そもそもタイトルが「詐欺師」を意味する語句であるし、DVDのジャケットなんかにも「騙される」という煽り文句があったりする。
絶対的に見る人間は騙されると思って構えて見るだろう。けどそこを構えさせない材料で攻めるのが巧みだと思う。
前妻が出産していたことを医師に告げられ、子どもだという少女に出会い、親子の時間を過ごしていく。ここで疑いを向けなければ何の疑問も無い。
そもそもの発端が「信頼がおける医師に告げられている」ということだ。ここは疑わないだろう。ニコラス・ケイジが何一つ疑問に思っていないのもミスリードの一つだ。すんなりと違和感なく飲み込んでしまう。ボーッとしてれば全て鵜呑みにしてしまうのだ。
このロイとアンジェラの親子の時間というのも非常にハートフルなほっこりしたものであるのも、最期の「どんでん返し」に拍車をかけるのだ。
詐欺師の親が詐欺の手段を娘に教える奇妙な光景だが、何もしてあげられなかった時間を埋めるように、唯一自分が持っている詐欺の手管を教える父親。
なにこれ、『レオン』みたい。ときめいちゃう。みたいな感じなのだ。
ぶっちゃけサム・ロックウェルが裏切ったところは先読みできたかも知れない。
私事になるが私がこの映画を見たきっかけは「サム・ロックウェルが見たいから」だったのだ。なのでサムに関しては何の疑いも持たない盲目野郎に成り下がっていたのだ。サム・ロックウェル、この作品でもろくでなしで大変かっこよかったです(盲目
なのでフランクの裏切りを知った瞬間「うわあああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!サム、てめえかああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」となった。心の中で絶叫した。
そしてその後に鈍器で殴られたかの如く知る、アンジェラが娘じゃなかった事実……。なんて絶望的な話だろうか。。。
ロイは「赤の他人の少女を娘と思って生活していた」のだ。こんな悲しい話あるかよ。切なすぎんだろ。その上お金は持ってかれて、どないやねん。
けれどこの話のラストはほんの少しちょうど良い加減で救いがあるのだ。
そこが憎いところで私が「うわあああああああああああああぎゃあああああああああああああ」と発狂している所を「まぁまぁ」とあったかいお茶を差し出してくれるようなラストなのだ。
数年後、娘では無いと分かっているアンジェラと偶然に遭遇するロイ。そこで少しだけ話をして、咎めるでも怒るでも無く普通に話して別れる。
このさっぱりしたエンディングが胸糞悪さを帳消しにしてくれるのだ。
非常にバランスが良い作品だと思う。
しかしサム・ロックウェルはろくでなしをやらせたら右に出る者は居ないなぁと感じる。ろくでなしをやってこそサム・ロックウェルだ。
『チャーリーズ・エンジェル』でもろくでなしをやってた気がする。でもかっこいいから好きなんだなぁ。みつを
【こんな人にオススメ】
・ラストに思わぬ展開が待っている作品が好きな方
・サム・ロックウェルが好きな方
・すっきりと騙されたい方
・家族愛やハートフルなジャンルも好きな方